CATSキャッツ 横田

 

2020年1月24日 ユナイテッド・シネマ・としまえん他 ロードショ

 

Cats キャッツ』――絢爛豪華 文句なく楽しめるミュージカル


                        横田 安正

 詩人TS Eliotの原作にアンドリュー・ロイド=ウエーバーが曲をつけた『Cats』は1981年のロンドン初演以来、世界で愛されているミュージカルである。このところ名作をトム・フーパー監督(ラ・ミゼラブル、英国王のスピーチ)が歌って踊れる名優を総動員して大胆な映画化を図った。背景はTSエリオットがこの作品を書いた1930年代後半のロンドン、ソーホー地区のゴミ捨て場だ。映画は子猫(ヴィクトリア)が人間に捨てられるシーンから始まる。そこはグリケル・キャッツ一族が支配する場所だった。その夜、一族を支配する長老猫が天国のパラダイスに送る一匹の猫を選ぶ重要な儀式があるというのだ。色々な性格の猫が登場し、ストーリーはクライマックスに向かって突き進む。

 この映画の見どころは巨大なセットに作られたソーホー地区のスラム街。目もくらむ光のなかで展開される猥雑感は見事である。次は出演陣の見事な歌唱力だ。フーパー監督はレ・ミゼラブルと同様に、歌はセットの中でライブで歌わせた。歌は演技の一部となり、涙で声がかすれたり臨場感が抜群なのである。歌を本業としない俳優たちも歌唱力が優れていることに驚かされる。次は猫の衣装である。猫の毛を纏った人間が登場するのだが、俳優たちは動きやすい衣装で踊り、撮影後にハイテク技術で猫の体毛をそれぞれの人間に張り付けたという。

 俳優陣では主役ヴィクトリアを演ずる英国ロイヤル・バレー団のプリンシパルダンサーであるフランチェスカ・ヘイワードの無垢で可憐な表情が素晴らしい。かつて有名な舞台俳優だったガスを演ずるイアン・マッケラン、長老猫デュトロノミーを演ずる名女優ジュディ・デンチは円熟した名演を披露してくれた。孤独な雌猫を演じたジェニファー・ハドソンのメモリーズの絶唱、鉄道をこよなく愛する猫スキンブルシャンクスを演じたスティーヴン・マクレイの驚異的なタップダンスなど見どころ満載である。

 昨年この映画が公開されると英米の批評家は一斉に激しい攻撃を始めた。「狂気の沙汰」、「猫の毛を着た人間など目の毒、それに卑猥なシーンが多い」、「製作者はLSDをしこたま飲んでこの映画を作ったに違いない」、「人間キャットはcreepy (キモイ)からgrotesque(グロテスク)の間」、「製作費は105億円というがこれほどの無駄遣いはイラク戦争以来のことだ」 等々、まるで絨毯爆撃だ。

 ところが一般の人たちからは全く別の意見がネットに寄せられている。特に幼稚園から小学生の子供と一緒に映画を観たという母親の多くは「子供は完全に映画の虜になっていた。素晴らしい作品でした。批評家の意見には反対です」という投稿が多かった。

 インテリ批評家にはお気に召さなかったようだが、たかがネコちゃんの話である。肩に力を入れず、童心に返って気楽に楽しんではいかだろうか。なにはともあれ、この映画の関係者̶登場人物、スタッフの並外れた熱意と努力に筆者は拍手を送りたい。

©2020 Ansei Yokota. All Rights Reserved.  11 Jan. 2020

©2019 UNIVERSAL PICTURES.ALL RIGHTS RESERVED.

 

横田レビュー に戻る
最近見た映画 に戻る