コードネームU.N.C.L.E. (アンクル)


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『コードネーム U.N.C.L.E.(アンクル)』原題 The Man from U.N.C.L.E.
製作年2015年 製作国アメリカ 配給ワーナー・ブラザース映画
上映時間116分 映倫区分G 言語:英語
スタッフ:
監督: ガイ・リッチー  
製作: ジョン・デイビス /スティーブ・クラーク=ホール /ライオネル・ウィグラム /ガイ・リッチー
キャスト:
ヘンリー・カビル: ナポレオン・ソロ/アーミー・ハマー: イリヤ・クリヤキン /アリシア・ヴィキャンデル:ギャッビー(ガブリエラ)・テラー/
エリザベス・デビッキ: ヴィクトリア・ヴィンチグエラ /ヒュー・グラント:アレキサンダー・ウェーバリー 
2015年11月14日から公開
公式HP: http://wwws.warnerbros.co.jp/codename-uncle/

『コードネーム U.N.C.L.E. ――オシャレでゴージャスなスパイ・アクション

                              清水 純子

イギリスのガイ・リッチー監督が、あの人気TV番組『0011 ナポレオン・ソロ』を映画用にリメイクした。
 『ナポレオン・ソロ』が誕生した60年代は、スパイもの映像が多く製作され、映画では『007 ジェームズ・ボンド』、テレビでは『0011 ナポレオン・ソロ』が王座を占めていた。
現在人気の映画シリーズ『ミッション・インシブル』のオリジナルが、『スパイ大作戦』のタイトルでテレビに登場したのも60年代である。
凄腕のリッチー監督とはいえ、大丈夫か?と心配して、おそるおそる劇場に足を運んだが、まったくの杞憂だった。
リッチー版『U.N.C.L.E』も期待をはるかに上回る素晴らしい出来ばえである。

U.N.C.L.Eは、世界の法と秩序を守る国際機関で “United Network Command for Law and Enforcement”(法執行のための連合網司令部)の略称である。
映画の舞台は、1963年 東西の冷戦の象徴であり、ベルリンを東西に分断する「ベルリンの壁」からスタートする。
最新の核兵器で世界撲滅をたくらむテロ組織撲滅のために、冷戦(第二次世界大戦後、アメリカの資本主義・自由主義とソ連の共産主義・社会主義との対立)下の二大大国アメリカとソ連が手を結ぶ。
アメリカ側はCIAのナポレオン・ソロ(ヘンリー・カビル)、ソ連はKGBのイリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)を選出する。 仲のいいTVのナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキンとは違って、映画の二人は、最初は敵対する関係であり、お互いに殺し合う寸前であったところを仲直りさせられる。

*胸のすくアクション
最初の息をつく暇を与えない見事なカーアクションのシーンは、イリヤに追われて銃撃されるナポレオンとギャッビー(アリシア・ヴィキャンデル)をとらえる。
二人の追いつ追われる関係は、「トムとジェリー」のナンセンスとユーモアに満ちている。
二台の車が双子のように並んで疾走する場面や、ありえない跳躍とタイミングのよさにはわくわくすると同時に笑ってしまう。
ガイ・リッチーのアクション場面の演出は、切れがあるだけでなく、ユーモアがあって楽しい。
カメラのアングルも複雑に工夫されていて、時としてスプリットスクリーン(映像画面が複数に分割されて映される技法)を用いて観客を堪能させる。
やや洗練されない体育会系の大男のイリヤが猪突猛進で敵に向かっていき、船ごと沈められて絶対絶命のところを助けるナポレオンは、トラックで悠々と観察ののち、車ごとイリヤの沈みゆく船の上にかぶさって敵の目を欺く。
ユーモアとスリル満載のアクション・シーンは、リッチーの演出がアイディアと撮影技法の双方においてすぐれていることの証明である。

*1960年代のゴージャスなフッション
リッチーの演出の見事さは、アクションだけではなく、ファッションにも発揮される。
1960年代という時代設定は、二人のエージェントの年代もののトランスレシーバーやホテルやオフィスの固定電話、そして女性のファッションに反映される。
元ナチスの天才科学者ウド・テラー博士の娘で、東ドイツで整備工をするギャビーが、東から西に脱出以降の変身ぶりは、カラフルでゴージャスな服装に表れる。
東ドイツでは、油にまみれた労働者階級の作業服を着ていたギャビーは、ロシアの建築家を偽装するイリヤの婚約者という役柄上、優雅でモダンな60年代ファッションを次々と披露して目を楽しませる。
最初にシャネル調の紺のスーツを試着したギャッビーの脚さばきが、がに股で、高級婦人服が板につかず、令嬢らしくない奇妙なふるまいも、西の資本主義の贅沢な環境に不慣れであることをさりげなく表現して巧妙である。
才色兼備の悪玉女ヴィクトリア・ヴィンチグエラ(エリザベス・デビッキ)の金に糸目をつけない、贅沢でゴージャスな洗練されたファッションも見ものである。
デビッキは、若い頃のカトリーヌ・ドヌーブに似ていると言われるが、『0011ナポレオン・ソロ』に時々出演していたデヴィッド・マッカラムの元夫人ジル・アイアランドに一番よく似ている。
ソ連のイリヤのファッションは、地味で簡素に抑えられているが、贅沢で女好きのプレイボーイのソロのスーツは、完璧である。英国のティモシー・エベレスト仕立てのスーツを着たナポレオン・ソロは、ファッション雑誌から抜け出したマヌカンのようなありえないカッコよさである。
TVのロバート・ボーンのソロは、「これこそ役者だ」と思わせる端正で魅力的な顔立ちであったが、カビルは体格がよい。
50年たつと美男の基準も変化する、21世紀のハンサムには、アスレチックで鍛え上げた大きな体躯が必要条件である。

*言語のアクセント
英国人であるリッチーは、英語のアクセントについても細かく気を配っている。
ソ連出身のイリヤには、最初はロシア語なまりのわかりにくい英語を話させている。
イリヤの英語は、ソロと打ち解けていくにつれてしだいに上達してこなれていく。
ソロのドイツ語について、東ドイツのギャッビーが「アメリカ人にしてはドイツ語がお上手」と言ってから、ギャッビー自身が流暢な英語に切り替えて話し出す。
ギャッビーの英語がうまい理由は、最後の方になってわかるのだが・・・


見事な映画は、卓越したアィディアと周到な計算、そして技術の裏付けによって製作されることをリッチーの『U.N. C. L. E』 は証明している。これは、劇場に足を運ぶ価値のある映画である。

Copyright © J. Shimizu All Rights Reserved.  2015. Sept. 1.
 


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TV 『0011 ナポレオン・ソロ』 原題 The Man from U.N.C.L.E 
アメリカNBC 1964年から1968年4シーズン放映

ナポレオン・ソロ(ロバート・ボーン)と
イリヤ・クリヤキン(デヴィッド・マッカラム)



デヴィッド・マッカラムと元夫人ジル・アイアランド

ジル・アイアランド