フレンチ・ラン

(C) 2016 Studiocanal S.A. TF1 Films Production S.A.S.All Rights Reserved



『フレンチ・ラン』(原題 Bastille Day)
製作年: 2016年/ 製作国: フランス・アメリカ合作/ 配給: ギャガ・プラス/
上映時間:92分/
スタッフ: 監督 ジェームズ・ワトキンス/ 製作フィリップ・ルースロ、デビッド・カンター、バード・ドロス/
製作総指揮: オリビエ・クールソン/
キャスト: イドリス・エルバ(ショーン・ブライアン役)/ リチャード・マッデン (マイケル・メイソン役)/ シャルロット・ルボン(ゾーイ役)/ ゲリー・ライリー(カレン・ディカー役)/
ジョゼ・ガルシア(ヴィクター・ガミュー役)/
劇場公開日 2017年3月4日


『フレンチ・ラン』――スリとCIAエージェントの痛快なコラボ      


                        清水 純子



腕利きのスリと敏腕CIAエージェントが手を組んで、共通の敵に挑んだらどんなことになるか?
『フレンチ・ラン』は、アメリカ人のスリとCIAエージェントが7月14日「バスティーユ・デイ」(「フランス革命記念日」、別名「パリ祭」)のパリを舞台に、巨大な悪を倒すためコラボ(協力)する華麗なアクション・ドラマである。

 パリに住むアメリカ人スリのマイケル・メイソンは、「バスティーユ・デイ」に浮かれ騒ぐパリっ子をカモに荒稼ぎをたくらむ。マイケルの雇ったヌードモデルは、パリの広間を闊歩し、驚き喜ぶパリっ子たちは、ヌードをカメラで撮る。興奮と混乱で注意力散漫のパリっ子のふところからマイケルは財布や貴重品を失敬して、地下鉄でモデル嬢に報酬の300ユーロを支払う。モデル嬢は、アパートでのアヴァンチュールに誘うが、車内に警官の姿を見たマイケルは、発車寸前のメトロから目もとまらぬ素早さで駆け降りて、ゆうゆうと立ち去る。マイケルがアルセーヌ・ルパン張りの知能犯、超一流のスリであることは、この場面だけでもわかる。
 しかし悪いことはできぬもの! 「二匹目のドジョウ」を狙うマイケルは、町で見かけた若い女性のバッグを鮮やかな手口で奪うが、熊のぬいぐるみが入っているだけで、金目の物はなにもなかった。がっかりしたマイケルは、バッグを放りだすが、その直後にバッグは爆発し、近くにいた4人が亡くなる。バッグを持った若い女は、テロリストの恋人に騙された爆弾の運び屋だった。監視カメラに姿を記録されたマイケルは、テロリストだと思われて指名手配になり、パリ中を逃げ回る。
 事件を担当するCIAエージェントのショーンは、マイケルを追跡して、格闘の末捕獲に成功する。映画の大きな見どころの一つは、ショーンとマイケルの追跡場面である。古いビルの屋根を器用にに危なげにつたって、崩れ落ちそうな柱や階段を飛び回る二人のアクションは、ハラハラドキドキさせる。ハリソン・フォードの『逃亡者』を彷彿とさせる追跡劇である。『逃亡者』同様、無実の罪を着せられたマイケルをショーンがCIAの隠れ家で尋問するが、二人は、爆弾テロの首謀者一味に嗅ぎ付けられて追われるはめになる。ショーンは、マイケルがテロとは無関係のコソ泥にすぎないが、凄腕であることを見込んで、解放を条件に協力をとりつける。

 犯罪者とその犯罪を告発するべき者が一体になって、さらに大きな巨大な悪の撲滅を目指して、手に汗を握るサスペンス・ドラマを繰り広げる。『バスティーユ・デイ』においても、真犯人は別にいるのだが、『逃亡者』よりもずっと巨大で腐敗した組織的悪の世界が黒幕となっている。勧善懲悪の胸のすく結末が用意されているが、一部のアクション映画に見られるような、たわいのないバカらしさからとは無縁である。
 肌の色は違っても、異国フランスで活躍する??アメリカ人という設定から、二人の男は急速に連帯感を密にしてコラボする。この映画には、文化の香り豊かな老大国フランスの腐食した内部を清める、新大陸からやってきた二人のアメリカ男の活躍を見る。しかし、二人のアメリカ男が犯罪を嗅ぎ付け、事前に阻止する能力が高いのは、母国アメリカの犯罪の手口が、フランスの上を行くせいで鍛えられているためだと考えることもできる。

犯罪がらみのアクション・ドラマなのに、鑑賞後のこの痛快さ、爽やかさはなんなのだろうか? 珍しいほど質の高い、お薦めのハイ・クォリティー映画である。


©2016 J. Shimizu. All Rights Reserved.  2016. Dec. 11



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