マイ・インターン


『マイ・インターン』原題 The Intern
製作年2015年  製作国アメリカ 配給 ワーナー・ブラザース映画 上映時間121分 映倫区分G
スタッフ: 
監督&脚本 ナンシー・マイヤーズ/製作ナンシー・マイヤーズスザンヌ・ファーウェル/  
製作総指揮セリア・コスタス
キャスト: ロバート・デ・ニーロ: ベン /アン・ハサウェイ:ジュールス /レネ・ルッソ
公開日:2015年10月10日(土)
新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
オフィシャルサイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/myintern/

© 2015 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED

    
『マイ・インターン』――華麗なるシルバー・ライフ

                清水 純子

     
あなたは、「加齢」は華麗な人生の喪失を意味すると恐れていないだろうか?
『マイ・インターン』のベン(ロバート・デニーロ)を見る限り、それは杞憂である。70歳のベンは、電話帳製作会社の部長を定年退職後、趣味、旅行、ボランティアで悠々自適の毎日を送るが、本当のところは退屈していた。
高校の校長だった妻に先立たれたとはいえ、男前のベンにモーションをかける女性がいないでもなかったが、ベンは仕事を通して社会とのつながりを再び持ちたかった。そんな時、ベンは町のスーパーで、65歳以上のシニア・インターン募集のチラシを目にする。「履歴書は時代遅れ、音声付自己紹介動画で応募」を条件にするファッション・サイト会社にチャレンジしたベンは、幸運にも採用されて、若い女社長ジュールス(アン・ハサウェイ)のもとで修行することになる。ところが、母親と折り合いの悪いジュールスは、年配者に対して苦手意識があり、あの手この手でベンを遠ざけようとする。そんなジュールスの気持ちをさらりと受けとめたベンは、長年の間に培った知恵と忍耐心をもって謙虚に堅実に奉仕したために、周囲の若手社員から慕われる。仕事と家庭の両立に苦しむジュールスも、公私ともになくてはならないアシスタントとしてベンを頼りにするようになる。ジュールスには、やり手の彼女のために会社を退職して一人娘の養育と家事を一手に引き受ける夫がいる。有能なビジネスマンだった夫は、納得のうえで主夫になったのだが、しだいに男としてのプライドが傷つけられていく。そんな時、そんな男がとる行動とは?

人生経験豊かで包容力あふれる、あたたかいベンの自然体の対応にジュールスをはじめとする若者たちは、頼り、癒されていく。オーソドックスな七三分けの髪型に、しゃれたネクタイをしめて仕立てのいいスーツを着て、年代もののアタッシュ・ケースを持ち歩くダンディなベンに、会社のマッサージ師の年配美女(レネ・ロッソ)もぞっこん、二人は交際を始める。
加齢にもかかわらず、華麗なシルバー・ライフを満喫するベンの物語は、シニア世代のフェアリー・テイル(お伽噺)に見えるかもしれない。なにがベンに華麗なシルバー・ライフをもたらしたのだろうか?この映画をみるかぎり、ベンが運のいい男だからではない、ベンの人柄と意欲が幸せを運んだのである。

加齢者の華麗なシルバー・ライフの秘訣

①柔軟で謙虚な心
ベンは、大手会社の管理職を経ているにもかかわらず、柔軟で謙虚な精神を失わない。えらくなった年配男性は、往々にして若者を見下して威張り散らす傾向があるが、ベンにはそれがない。ベンは、若い世代への尊敬の心を持っている。ベンは若い人々の長所を自分の中に取り入れようという謙虚さと向上心を失わない。

②すぐれたコミュニケーション能力
ベンは卓越したコミュニケーション能力をもつ。アドヴァイスすべきところは積極的に、黙っていた方がいいところは見ないふりをできる。こういう芸当が可能なベンは、人を冷静に観察する力があり、人の立場を理解したうえで分析して、正しい対処法を考案できる理性と知能、それに経験を備えているからである。

③共感能力の高さ
ベンは知性だけでなく、感情も豊かであるために、人の気持ちや立場がよくわかる。人生とビジネスの修羅場を生き抜いてきたベンには、人の心がわかり、適切な対応ができる。

④好奇心
ベンは好奇心の強い男である。古いものを大切にする一方で、新しいものに興味を持ち、自分のものにしてより快適で豊かな人生を送ろうという気概を持っている。

⑤健康
ベンは健康である。ベンは健康に良いことを取りいれ、悪いことは避けるようにしている。ベンは大酒は飲まない、大食もしない、マリファナやタバコ系を過度に嗜まない、その一方で血圧の薬を飲んだり、太極拳に参加したりして、適度の健康への気配り、運動とリラックスを心がける。周りの人々をサポートするには、まず自分が健康でなくてはならないからである。ベンは、節制の甲斐あってか、70歳でも女性への関心を失わない、それだから女性からもベンは隅に置かれない。加齢にもかかわらず、ベンの華麗なシルバー・ライフを支えるのは、ベン自身の意欲と心身の能力である。加齢と共に枯れて行くばかりが能ではない、自分の人生を再構築してあらたに踏み出す力を蓄えてみようではないか。

人生のどのステージにおいても、幸福を得る努力を謳歌するこの映画は、きわめてアメリカ的パイオニア・スピリットを讃えた映画である。
高齢化社会を迎えた日本でも、ベンのような人が増えてほしいとあなたは思わないだろうか?

 Copyright © J. Shimizu All Rights Reserved. 2015. Sept. 4

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